著作権法の目的と基本の原則-著作物として保護されるものは?

この記事は約4分で読めます。

著作権法の目的と基本の原則

著作権法は、著作物について、著作権者などの権利の保護を図り、文化の発展に寄与することを目的としています。

著作権法に定める著作者の権利を大別すると、著作者人格権と、財産権としての著作権があります。
例えば、著作者人格権であれば、意に反して変更や切除その他の改変を受けないとする同一性保持権などが、財産権としての著作権であれば、有形的な再製をする権利である複製権、二次的著作物を創作する権利である翻案権などがあります。

全ての表現物=「著作物」にはなり得ない

著作権法で定義する「著作物」とは、人の「思想又は感情」を「創作的に」「表現したもの」で、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものです。

したがって、全ての表現物が著作物に該当するわけではない点に留意する必要があります。

「思想又は感情」

一般的に、人間の考えや気持ちが現れているものであれば足りるとされています。
したがって、データや、単なる事実などは保護の対象になり得ないものとされています。

「創作的に」

著作物であるためには、人の思想又は感情を「創作的に」表現したものであることが必要です。
これを一般に、創作性といいます。

著作権法は、創作性を定義していません。
しかし、一般的に、著作物は人の精神活動の成果であり、そこには創作者の個性が表れているものとされています。
そこで、表現物に、表現者の個性が現れていないと評価される場合、例えば、非常に短い文章であるとか、ごく普通の表現方法で記述したありふれた表現である場合には、創作性が否定される場合があります。

「表現したもの」

著作権法の保護を受ける著作物は、思想又は感情の「表現」(expression)で、思想又は感情それ自体(アイデア〔idea〕)は著作物として保護されません。
この著作権法の原則はアイデア表現二分論」といわれることがあります。

世界貿易機関(WTO)の全加盟国(150か国以上)が受諾している、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)9条2項は、
「著作権の保護は,表現されたものに及ぶものとし,思想,手続,運用方法又は数学的概念自体には及んではならない。」
(Copyright protection shall extend to expressions and not to ideas, procedures, methods of operation or mathematical concepts as such.)
と定めており、著作権の保護は「表現」されたものに及び、思想などには及ばないことを明文で確認しています。

このように、アイデア・表現二分論は、著作物に関する世界的な考え方と評価しても過言ではないのです。

著作物性に関連する裁判例

実験結果などの事実は著作物にあたる?

実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しない」とし、著作物性を否定しました(知財高判平成17年5月25日(京都大学学士論文事件))。

ありふれた表現と著作物性

「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」という表現について、第一審は創作性を認めたものの、控訴審は著作物性を否定。

その理由の一つとして、「(特定の事業又は仕事)と結婚したようなもの」との用語は、特に配偶者との家庭生活を十分に顧みることなく特定の事業又は仕事に精力を注ぐさまを比喩的に表すものとして広く用いられている、ごくありふれたものとして、正造と富士屋ホテルとの関係という事実に関するごく自然な感想という思想であることを挙げています(知財高判平成22年7月14日判時2100号134頁(富士屋ホテル事件))。

※正造・・・明治11年創業の「富士屋ホテル」の実質的な2代目の経営者である山口正造

えんどう法律事務所
〒189-0014 東京都東村山市本町2-14-18-107
TEL 042-203-5842(※)
FAX 042-308-8468
メール info@endd-law.com
(平日)9:30~18:00
(土曜・休日)ご相談ください
(※)メール又はお問い合わせフォームもご利用ください

    お電話での返答を希望しない