裁判所に破産・免責申立を行い、免責許可決定が確定すると、破産債権(破産申立前〔厳密には、手続開始前〕の原因によって生じた債権)について、原則として、その責任(支払義務)を免れます。
しかし、破産申立前の原因によって生じた債権でも、例外的に、その支払いを免れることができない債権があります。これを「非免責債権」と呼びます。
非免責債権は、免責許可が確定しても支払い義務が消えない債権ですから、債務整理の手段や必要性の検討に当たっては、自身の負担している債務の性質を詳細に検討しなければいけません。
以下では、破産法上の非免責債権を解説します。
租税等の請求権(破産法253条1項1号)
これは、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」です。
例えば、所得税、住民税、固定資産・都市計画税、(軽)自動車税、健康保険料等の公租公課や、他に、生活保護費の返還請求権などがあります。
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(3号)
少し具体化すると、故意(わざと)又はそれと同視できる程度の過失により、人を死亡させたり、身体に怪我させたりした行為によって生じた損害を賠償する義務です。
婚姻費用や監護費用(養育費)の請求権、契約によって生じたそれに類するもの(4号イ~ホ)
婚姻費用とは、別居中の夫婦の間における、生活費などの婚姻生活を維持するために必要な費用をいいます。
他方、監護費用(養育費)とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに、子どもの監護や教育のために必要な費用をいいます。
知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(5号)
これは、債権の存在を知りつつ裁判所に申告しなかった債権者の債権です。
裁判例では、過失により申告しなかった債権者の債権も含むと解釈されています。
ただし、いずれの場合でも、債権者が破産手続の開始を知っている場合は除かれます。
罰金等の請求権(6号)
これは、「罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権」です。
国家が裁判などで課すものに限られますから、個人が「罰金」などと称する債権は含みません。
最後に
破産免責は、通常、ご依頼者様にとって一番経済的利益が大きい手続ですが、このように免責の恩恵を受けることができない債権もあることから、注意が必要です。
非免責債権は、公租公課や養育費等といった明確なものから、悪意で加えた損害賠償請求権といった法律的な評価が必要なものまで様々です。
特に、後者の該当性の見通しについては、裁判例を踏まえた適切な検討が必要不可欠です。
抱えている債務が非免責債権に該当するかどうかの判断は、ご自身で行うことなく、お気軽に弁護士にご相談ください。