個人再生手続とその返済金額

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個人再生手続(小規模個人再生手続)で、最低限弁済をしなければならない金額を解説します。

民事再生法によれば、個人再生手続(小規模個人再生手続)において最低限弁済しなければならない金額は、次の⑴・⑵のうち、どちらか高い方の額である必要があります。

⑴最低弁済額
⑵清算価値

なお、給与所得者等再生(通常、小規模個人再生ができない場合に検討される手続)の場合、
⑴最低弁済額、⑵清算価値、⑶可処分所得の2年分 のうち、最も高額なものが最低限の弁済金額になります(通常は⑶可処分所得の2年分が最低限の弁済金額)。
「可処分所得」とは、収入から、税金等の公租公課や法定の生活費等を控除した額です。

借金などの総額に応じて最低弁済額が定まります。
下記の表が基準となります。

「借金などの総額」とは、民事再生法に基づく表現をすると「無異議債権の額及び評価済債権の額」又は「基準債権額」となります。これらは、簡単にいうと、再生手続開始前の原因に基づいて発生した債権(再生債権)から、担保権によって弁済を受けることができると見込まれる額などを除いたものをいいます。
ですが、通常は、個人再生手続申立前に発生した借金などの額と理解して問題ありません。

例えば、総額が500万円の場合には、上の表に照らすと「500万円以上、1500万円未満」ですから、最低弁済額は5分の1の100万円になります。

表のとおり、借金などの総額が100万円未満であったり、100万円に近い額であったりすると、借金額の大幅な減免は見込まれませんので、注意が必要です。


また、住宅を残すことができる住宅資金特別条項を定める場合には、当該住宅ローンの金額はこれに含みません。

なお、個人再生計画案の認可の要件としては、借金などのが5000万円以下である必要があります。
5000万円を超える場合は、個人再生が廃止(不認可)となってしまいますので、破産などを検討するか、債務額を5000万円以下に減らす必要があります。

清算価値とは、簡単にいえば、ご依頼者様の資産の総額をいいます。

ただし、すべての資産が清算価値として計上されるわけではなく、こちらで紹介した換価の基準により、換価されるべき額が清算価値として計上されることになります(東京地裁の場合)。
※地裁の運用により計算方法が異なる場合がありますのでご注意ください。

注意が必要な点としては、住宅(不動産)を残そうとする場合で、住宅の価値が住宅ローン残債務額を上回る(アンダーローン)場合だと、上回った額が資産として計上されることになりますので、予想外に清算価値が高額となってしまうことがあります。
そのため、申立をする前には、あらかじめ査定書により住宅の価値を把握することが必要です。

①基準債権の総額が230万円、清算価値が80万円の場合

この場合は、弁済額の基準は100万円になります。

上記の表によれば、基準債権の総額が「100万円以上500万円未満」に当たるので、最低弁済額は100万円となります。
一方、清算価値は80万円ですので、両者を比較し、高い額となる最低弁済額(100万円)が弁済額の基準となります。

②基準債権の額が1530万円、清算価値が500万円、住宅ローンが2500万円(住宅資金特別条項付)の場合

この場合は、弁済額の基準は500万円になります。

上記の表によれば、基準債権の総額が「1500万円以上3000万円未満」に当たるので、最低弁済額は300万円となります。
一方、清算価値は500万円ですので、両者を比較し、高い額となる清算価値(500万円)が弁済額の基準となります。

※住宅ローンは影響を受けませんので、約定通り支払う必要があります。

再生計画で定める弁済期間は、原則として3年です。
しかし、3年の弁済期間では支払うことが困難な場合などの「特別の事情」があれば、5年を超えない範囲で弁済期間を定めることも可能になります。

通常は、再生計画認可決定後から、最低限の弁済額を3年(36回)ないし5年(60回)で支払っていくことになります。

小規模個人再生手続は、借金などの総額に応じた弁済額の減免に加え、これに対する長期間での分割返済ができるなど、強い法的手続ではありますが、申立から認可までの期間も比較的長く、裁判所などによる調査事項も多岐にわたります。
さらに、借金の金額や性質、保有している財産の評価を適切に把握し、正確な見通しを検討しなければ、減免額が想定より低くなるなど、後に予想外の事態が発覚する可能性があります。そのため、個人再生を検討するにあたっては、申立前の入念な準備が不可欠です。


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